可愛がりたい、溺愛したい。



「え、なに話したのって別に大したこと話してないよ」


「ふーん」


そっちから聞いてきたくせに、返しの相づちはあまり興味がなさそう。



「あ、でも……」


ふと思い出したけど、そこで止めた。



『帆乃ちゃんから依生にもう一回好きって伝えてみるとかどう?』


いきなりこのセリフが頭の中にボンッと浮かんだせい。


「でも、なに?」


「な、なんでもない…!
聞かなかったことにして!」


好きなんて、もう伝えることはないと思うし、ぜったいできっこないから。



「そうやって濁されると気になるもんだよ。
今度涼介に聞いてみよ」


花野井くんは今日話したことを依生くんには言わない約束をしてくれたから。



たぶんだけど、聞いても教えてもらえないよって思いながら、その日は家へと帰って行った。

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