可愛がりたい、溺愛したい。
「べつに1人で乗ってもいいと思うけど…」
「乗れないわけじゃないならいーじゃん。一緒に乗ってよ」
すごく押してくるし、1回でも付き合わないとずっとしつこく言ってきそうだから渋々勢いで乗ってみたんだけど……。
「ぬぅ……気持ち悪い……」
自分が思っていたより三半規管が弱かったのか、1度乗っただけで酔ってしまった。
「大丈夫?」
とても歩けそうになくて、というか気分が悪すぎて起きていることでさえ億劫。
降りたところにベンチがあったので、身体を横にして頭を葉月くんの太ももの上に置かせてもらっている。
「ご、ごめんね。まさかここまで自分が乗り物に酔いやすいとは思ってなくて」
「いいよ。俺のほうこそ強引に誘ってごめんね」
葉月くんの大きな手のひらが、優しく前髪をふわっと撫でてきた。
「あ、そーいえば今日はメガネじゃないんだね」
「うん、休みの日に出かけるときはいつもコンタクトかな」