可愛がりたい、溺愛したい。



「帆乃はなーんもわかってないね」


「……ん、や……っ」



ささやくだけじゃなくて、依生くんの唇が耳たぶに触れて、くすぐったいどころじゃない、変な感覚。


しかも、反対側の耳たぶは、器用に親指と人差し指で挟んで、じわっと触ってくるから。



「帆乃は人より敏感なんだよ。
少し身体触られただけですぐにビクついちゃうから」



何もかもぜんぶお見通し。


わかっていて、こういうことをしてくる計算高い依生くんのやり方はずるいくせに甘い。



「変なの……、くすぐったいのいや……っ」



「そんな可愛い声で言っても効果ないのに。
むしろ煽ってるって気づいてる?」



声を出そうとしても、変な声が出てきちゃうから、首を横に振ることしかできない。


「じゃあさっき何言おうとしたのか言って。
そーしたら、イジワルやめてあげるから」


結局、やっぱり敵わない。

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