私、強引で甘く一途な御曹司にドキドキさせられっぱなしです!
本宮さんの顔が、ゆっくりと私に近づく。


このまま…


キスしてもいいかな…


って、一瞬、本気で思ってしまった。


でも…やっぱり…


一弥先輩の笑顔が浮かんで来る…


ダメだ、そう思ったとたん、私は本宮さんから離れた。


『私、可愛くないですから。すみません』


と、後ずさりしながら、私はまた下を向いた。


『自分に自信が無いって言う気持ちはわかる。俺も…まだまだ自分に自信が無いから。でも、恭香には、もっと自信を持って欲しい。目の前でお前の素顔を見てる俺が言うんだ。だから、間違いない。恭香は…』


また数秒の沈黙。


その静寂の中で聞こえたのは、本宮さんが息を飲む音だけだった。


『本当に可愛いよ』


『本宮さん…』


それから本宮さんは、急に照れたように、


『…の、喉乾いてるだろ。恭香も何か飲んだらいい』


そう言って、元の場所に座った。


まるで、さっきまでの夢のような時間が、何も無かったかのように…
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