好きになるには理由があります
 


「船長っ」
と深月に呼ばれて、陽太は、ちょっと嬉しかった。

 昔、船長になりたかったからだ。

 だが、深月はすぐに、支社長っ、と言い換える。

 そして、死ぬほどくだらないことを言ってきた。

「今、杵崎さんが思いっきり意味深なことを言って去ってったんですっ。

 なんだったのか訊いといてくださいっ」

 ……何故、英孝の話題、と思わなくもなかったが。

 深月自身は気づいていないようだが、訊いといてください、と頼みながら、パシパシ腕を叩いてくる。

 いや、お前、その仕草はまずいだろう。

 支社長の腕をパシパシする一般社員など居ない。

 そう思いながらも、深月が気を許してくれているように感じて、嬉しかった。

 支社長室に戻ると杵崎が来たので、
「おい、深月がお前が去り際に言ってたことが気になると言ってるんだが」
と訊くと、杵崎は、ああ、と呟いて言う。
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