好きになるには理由があります
 そうっと陽太の顔を覗き込もうとしたとき、いきなり腕を引っ張られた。

 うわっ、と体勢を崩して、深月は陽太の上に落ちる。

 深月の両腕をつかんだまま、陽太は、
「おはよう」
と言ってくる。

 そのまま抱き寄せられた。

 今日はどちらも服を着ているので、この間のような気まずさはないが。

 落ち着くけど、落ち着かないというか。

 落ち着かないけど、落ち着くというか。

 やはり、妙な感じだった。

 深月を抱き寄せ、自分の上に寝かせた陽太は、ぽんぽん、と深月の頭を叩いたあと、ちょっとだけそのまま、じっとしていた。

「……うん、このくらいはできるぞ」
という謎の言葉を残し、陽太は起き上がる。

「よし、朝食の用意をするか」
と気持ちを切り替えるように言う陽太に、深月は、

「あっ、手伝いますっ」
と慌てて言いながら、ベッドから下りたが。

「……手伝います、か。
 お前が主導というパターンはないんだな」
と陽太は半眼の目でこちらを見ながら、呟いていた。

 いや……、家事苦手なんで。

 ほんとすみません……。



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