好きになるには理由があります
「まだ俺に神は舞い降りてこない。

 お前が神のものだと言うのなら、俺はお前を手に入れるために神になろうと誓ったのに。

 本番が近づいても、俺はまだ神に近づけてない。

 だから、まだ本番が来ないといいと思ってた」

 陽太は深月のグラスにだけ白ワインを注いで言った。

「でも、今は今すぐ始まって終わって欲しい。
 神楽が終わるまで、お前が清らかでなければならないと言うのなら」

「支社長」
と深月は呼びかける。

「支社長は――

 私になにもしてませんよね?」

 陽太はずっと苦手だったあのまっすぐな視線で深月を見つめたあとで言ってきた。

「……呑め」
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