都の剣〜千年越しの初恋〜
悪霊は、体から人間の体調不良を引き起こす空気をまとっている。霊感のある人間は、その空気に触れると体が過剰に反応するため、悪霊がいるとすぐにわかるのだ。

悪霊がいるのは学校の屋上。沙月は早足で屋上へと向かう。後ろから、葉月が近づいてきた。

「かなり強い霊だ。おまけに単体じゃない。…厄介だな」

「うん。慎重に除霊しないとね」

除霊に失敗すると、霊感のない生徒に何が起こるかわからない。ドクドクと沙月の鼓動が早くなっていく。

その時、震えている沙月の手に温かいものが触れた。葉月がそっと沙月の手を握ったのだ。

「葉月!学校でこんなことしたら…」

みんなにバレちゃう、と言いかけた沙月は葉月の真剣な目に何も言えなくなった。

「……震える必要はない。俺がついている」

葉月はそう言いながら、沙月の手をさらに強く握る。それだけで、沙月は少し安心した。

「……ありがとう」

屋上に近づくにつれて、めまいや動機は強くなっていく。それと同時に、霊の持つ怒りや悲しみも沙月の心を掴んだ。
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