都の剣〜千年越しの初恋〜
沙月はふと、葉月は進路をどうするんだろうと思い葉月の方を見る。葉月は沙月の視線に気づいていないのか、本を読む手を止めるそぶりを見せない。

葉月は、中学三年生の春休みにおじいちゃんに連れられて沙月の家に来た。京都から来たという。

卒業したら、京都に帰ってしまうのかな…。

沙月はそう思うと、少し寂しくなった。

そんな中、友達は夏休みの話をどんどん進めていく。

「お祭りにも行って、カラオケにもみんなで行きたいなぁ〜」

「お泊まり会とかしてみたい!」

夏休みはきっと、沙月と葉月は除霊の仕事で忙しいだろう。夏は死者があの世から大勢帰ってくる。しかし、除霊のことなど友達は知らない。友達ともうまく付き合っていかないといけない。

「……今年の夏は忙しそう」

沙月がそんなひとりごとを呟いた刹那、ドクンと胸が嫌な音を立てる。同時に、くらりとめまいを感じた。

「…ごめん!ちょっと保健室行ってくるね」

沙月はそう友達に言うと、ゆっくりと教室を出る。これは悪霊の気配だ。かなり強い。
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