都の剣〜千年越しの初恋〜
三章 古の記憶
沙月の頭の中に、これまで過ごした日々がまるで走馬灯のように思い浮かぶ。今まで忘れていた幼い頃の記憶までもが蘇り、また沙月の目の前は闇に染まる。

次に見えたのは、豪華な和室。先ほどまで目の前に見えたものより鮮明で、まるで現実世界のようだ。

「……私……」

沙月が目の前にある鏡を見つめる。そこに映っていたのは、平安時代の貴族のように着物を重ね着した少女。沙月ではなくサシャだ。

「サシャ様、舞の稽古のお時間です」

襖が開き、侍女の一人が部屋に入ってくる。沙月は心の中でどうすればいいのかわからず戸惑うが、サシャは冷静に口を開いた。

「……わかった」

サシャの中に沙月はいるが、サシャしか会話はできないようだ。それに沙月は安堵する。

廊下をサシャは歩いていく。その間、沙月の頭の中にまた映像が流れた。それはまるで、テレビのナレーションのようだ。

「ここはあの世。死者や神々、妖が住まいし場所…。日本を創った偉大なる神、イザナギノミコト様とイザナミノミコト様が治め、あの世は平和に満ちていました」
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