眠れぬ夜のお嬢様と執事の寝物語〜温かいハーブティーをどうぞ。さ、おやすみなさいませ〜
眠れぬ夜 四日目

ようこそ、眠れぬお嬢様。柑橘のティーをどうぞ。京柚子、オレンジ、温州みかんとハーブのブレンドです。

 今日も私は眠れない。

 ……こんなに疲れているのになあ。

 バタバタと忙しい一日だった。明日も、少し忙しいかも。

(はあ……)

 私はため息をこぼす。

 早く眠らなくちゃ、明日に障る。

 人間、寝ないとつらいし、病気になるし、死ぬとも言われる。

 だから私は大人しくベッドに横になっている。

 眠るためにはベッドに横になっていなくちゃならないからね。

 でも、眠気が来ない……!

 この時間って、なんて無駄なんだろうと思う。なんにもできない時間だよ?

 眠るためには、スマートフォンを見るのはよくないっていうからなるべく触らないようにしている。

 本を読むのだってあんまりおもしろいと目が覚めてしまうから控える。

 目を閉じて、ただただ意識を無にしようとする。

 ……つまんないよ。

 限られた人生の中で、こんな無駄な時間を過ごさなくちゃいけない私ってなんなんだろう。

 こうしてうだうだしている間にも、他の人は眠りについて体力を回復している。私は眠るのに成功しない限り回復しない。それなのに、おもしろいことは何もできない退屈な時間。

 あーあ。

 すっと眠れる人が羨ましい。

 某のび太君は、眠りにつくまでわずか0.93秒なんだって。

 眠りの天才だ。ほんと、そんなのって、スーパーエリートだと思う。

(はあ……)

 ため息をついて、私は降参したように目を開ける。

 いつもの部屋。窓にはカーテンがかかって月明りもない薄暗い室内。

「お嬢様?」

 ――それと、いつもの影。

「眠れませんか?」

 私が目を開ける動作をしただけで、気付いてくれる人。

 枕元のスツールに座って、私を見守っていてくれる、フットマンの静真が。

「うん。……眠れない」

 眠れない焦りと心細さを抱いた私に、彼はそっと微笑んでくれる。

「大丈夫ですよ。私がついております」

 彼は私の家の使用人という仕事に誇りを持っているという。

 それでいつだって私を見ていてくれる。

 そうだね。

 私には、眠るまで癒してくれる人達がいる。

 きっとダイニングには執事の時實もいて、私が望めばハーブティーや夜食を作ってくれる。

 眠れたらもちろん休まるけど、起きていたって癒されるし、もし怖い夢を見たって、起きちゃったって大丈夫。

 そう思ったら、いつの間にか眠れていた。
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