また、いつか
幼い頃から聡明だった治憲は、10歳の時秋月家から上杉家の養子に迎えられ、17歳で藩主の座に就いた。

そして19歳の時、前藩主重定の娘幸姫を正室に迎える。

治憲が藩主になったのは幸姫の婿になるのが前提での話であり、この時幸姫は17歳。

妙齢の女性であるが、幸姫は障害があり、心身ともに10歳にも満たない幼女のような人であった。

当然普通の夫婦生活など望めるべくもない。

しかし治憲は幸姫を愛し、慈しんだ。

江戸在府時には毎日彼女の部屋に通い、人形遊びや玩具遊びに付き合った。

幸姫のために折り紙で鶴を折ることを覚え、布で人形を縫うことを覚えた。

幸姫もそんな治憲に懐き、彼が来るのを心待ちにした。

姫の侍女達でさえ無理だと思っていたのに、治憲は幸姫に人形の顔に顔を描くことを根気強く教え、彼女は治憲の気持ちによく応えた。

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