また、いつか
「とのは?」

幸姫は、毎日そう聞いて侍女を困らせた。

治憲が江戸を発ってから毎日聞いてくるのだから、侍女もたまったものではない。

『との』は1年経ったら戻ってくると言ったけど、幸姫には1年がどのようなものかわからない。

『との』に会いたくて、『との』が恋しくて、幸姫は泣き叫んで、駄々をこねて、侍女達を困らせた。


あの優しい人は、あといくつ寝たら私に会いに来てくれるのだろう。


『良い子で待っていて』とあの人は言っていた。


あとどのくらい『良い子』になれば、あの人は戻って来てくれるのだろう。

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