また、いつか
ひとしきり泣いて落ち着いてきた幸姫が、治憲の手を引いて自室に案内しようとする。

大人しくついていくと、そこには何体もの布人形。

全部治憲が国元に戻る前に作ってやったもので、その全部に、上手に顔が描かれていた。


「姫…、上手になりましたね」

ああ、この方は…。

この方はこの方なりに、こうして日々成長しているのだ。

それにしても、一年前とは比べものにならないほどの上達ぶりだ。

きっと私が戻って来た時に喜ばせたくて努力されたのだろう。

思わず涙ぐむ治憲に、幸姫は2体、手に取って、
「との、よし」
と言った。

「ああ、また姫と私を作ってくれたのですね。
うん…、姫にそっくりだ」

可愛らしく描かれた幸姫の顔と、キリッと凛々しく描かれた治憲の顔。

ー姫には私がこんな風に見えているのだなー

治憲は2体の人形を手に取って、
「金屏風を作ってあげましょう。
仲良く飾ってあげましょうね」
と幸姫に微笑んだ。

でも幸姫は姫人形の方を指して

「よし」

と言う。

キョトンと人形と幸姫を見比べる治憲。

「ええ、姫のお人形ですよね?
よく似ていますよ?」

「よし」

伝わらないことに苛立ったのか、幸姫がぷうっと頬を膨らませる。

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