焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新

……もう、帰ろう。

グラスとお皿を下げて一直線にドアを目指す。

外に出ればこの鬱々とした感情からも解放される。

そう思って、焦燥感に駆り立てられながらドアノブに手を伸ばしたら。

「っ待てよ!」

慌てた声に足がとまり、誰かに手首を掴まれた。振り向いた先には。

「……え?!瀬戸さん」

「やっぱ清水だ」

「瀬戸さん、何で」

いつもより柔らかくセットされた黒髪にお洒落なスーツ。一瞬誰か分からなかった。

それくらい会社にいる時と雰囲気が違うから。

「こっちが聞きたいよそれ。俺は常連の友達に誘われて来たんだ。なんか清水に似てる子いるなって思ってたら、急に出て行こうとするから」

「私も、前からこのお店に通っていたので」

――ちょっとでも成宮さんかもって淡い期待を抱いた私は、どうしようもない。

< 131 / 242 >

この作品をシェア

pagetop