焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新

唯一無二の存在になりたいんだと。

でも違ったんだ。

亜里沙さんは成宮さんが嫌なことをさせたくないから、恋人未満でもいいと。

「だからね、和花菜ちゃん。和花菜ちゃんも樹季に嫌な思いをさせないで」

嫌な思いをさせないで、か。

「でも。このまま一生、愛する人に手を伸ばせないなんて悲しいですよね」

そうやって、この先も生きていくのか。

「私は傷つけられてもいいです。お互い何も傷つかないまま愛するなんて、出来ないと思います」

相手に何も傷をつけず愛することは、無理なんじゃないか。

傷つき合いながらも愛をはぐくんでいくものじゃないのかな。

「そんなの、あなたのエゴでしょう。それで樹季を傷つけていい理由にはならないわ」

「亜里沙さんの言うとおりです。傷つけられていい、なんて一方が主張しても傷つける側の方がつらいこともある」

成宮さんは傷つけられる側の気持ちもよく分かっているから、余計避けて通りたい道だろう。

「けど、私は踏み込んで、両腕を広げて抱きしめたい」

たとえば相手がナイフを持っていて、これ以上近づくなと心臓を刺したとしても。

そのまま踏み込んで相手に手を伸ばしたい。

大丈夫だよ、って伝えたい。

「本当は亜里沙さんも。それを望んでいるんじゃないんですか?」

「な、なにを」

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