焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新
そうして忙しなく業務を終えて、星が瞬く夜空の下を歩き、オレンジの明かりが灯るバーの扉をくぐった。
「いらっしゃいませ」
出迎えてくれたのは成宮さん。
「おふたり共、こちらへおかけください」
カウンターの中央に案内され、成宮さんがグラスを用意する。
完璧なふるまいをするのは成宮さんの通常運転だ。
分かっていても、成宮さんのなかで、なかったことにされてるんじゃないかと少し心が揺れる。
「あの、成宮さん。先日はありがとうございました」
タオルが入った紙袋と、ちょっとしたお礼のお菓子を添えて渡す。
「ありがとうございます。適当に返してくださってもよかったのに」
「そういうわけにはいきませんから」
前のめりで言うと、『和花菜さんらしいですね』と微笑む。
それから成宮さんはそっとカウンターの後ろに紙袋を置いた。
「さ、和花菜。席に座ろう」
瀬戸さんの言葉に促されて、席に座る。
瀬戸さんもすっかりバーの常連になっていて、いつものでと言えば成宮さんがジン・トニックを2人分作ってくれた。
「次はブルーラグーンお願いします。和花菜は?」
「私は瀬戸さんのおススメで」