焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新
カランッ!いつもより大きくドアベルが鳴った。
「マスター、こんにちは」
「いらっしゃい和花菜ちゃん……って、ずぶ濡れじゃないか!」
マスターがグラスを拭く手をとめて足早にカウンターから駆け寄ってきた。
動揺するマスター見るの、久し振りかもなんて頭の片隅で考える。
「あはは、会社出るときちょうど通り雨が降ってきて」
夏だからか、突然雨が降り出すことが多い。でもここまで大雨になるとは思わなかったなぁ。
「傘は?持ってないのかい?」
「同僚に貸しちゃいました。まあすぐ止むかなって思って」
ここら辺はコンビニもないし、今回のためだけに傘を買うのもな、って躊躇してしまったから。
「だからってねぇ、和花菜ちゃん」
「それより、頼まれてた資料届けにきましたよ。今度開催するイベント用のサイト原案」
マスターにできたての資料を手渡す。
「もしかして、これを届けるためにわざわざ……」
「すぐに渡した方がマスターも計画しやすいでしょうし、明日明後日は出張なので」
自分は濡れても構わないけど、資料は濡れないようにと細心の注意を払って持ってきた。