焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新
「あははっ、和花菜さんって面白いこと言いますね。味じゃなくて色を褒められたのは初めてだ」
くしゃっとくずして笑う顔も、少し幼くみえてギャップに心臓がはねる。
こういう笑い方もする人なんだ。
「私広告関係の会社で働いているので、色のバランスとかが気になっちゃうんですよね」
「だから色の名前に詳しいんですね。俺だったらこのカクテル、黄色とオレンジ色だな、としか思わないのに」
「それで十分ですよ。私の見方が変わってるだけなので」
成宮さんはまだくすくすと笑ったまま。そんなに変わった褒め方だったのかな?ちょっと恥ずかしい。
「出来れば見た目だけじゃなくて、味も褒めて欲しいな」
飲んでみて、と促されてカクテルグラスに口をつける。柑橘系の香りと濃厚な味わいに自然と口角があがった。
「……すごい美味しいです!」
「はは、喜んでもらえて安心した」
爽やかなジン・トニックと比べて味は濃いめだけど、全然しつこくなくていくらでも飲めそうだ。
成宮さんが作ってくれたっていうフィルターを抜きにしても美味しい。
「アイオープナーのカクテル言葉は、『運命の出逢い』っていうんですよ」
「運命の、出逢い?」
「ええ。今日、和花菜さんと出逢えたことが嬉しかったので。このカクテルにしてみました」
「………っ!」
魅惑的な台詞と破壊力抜群の笑顔。ずるいですよ、成宮さん。グラスを持つ指に力が入る。
「成宮さーん、注文していいですか?」