藍と未来の一つ屋根の下
引っ越しの一週間前、藍の家で未来のお別れ会をしてくれた。


「そんなに遠くに行くわけじゃないんだから、いつでも会いにこれるよ」


未来はそう言ったけど、まだ杖をついたままのばーちゃんはご馳走をたくさん作ってくれた。


「ばーちゃん座っててよ」と未来が言っても、ばーちゃんは聞かなかった。


かずオッちゃんが特上のお寿司を出前してくれて、「大袈裟だよ」と未来は笑う。


笑って引っ越そう。未来はそう決めていた。


「ここは未来の実家だからな。いつでも…」


そういって言葉を詰まらせたかずオッちゃんにつられて、一度泣き出すと未来の涙は止まらなかった。


毎日ご飯を食べたり宿題をしたダイニング。

かずオッちゃんとサッカーを観ていたテレビや、ばーちゃんと一緒に立ったキッチン。

二階の藍の部屋は、1つしかない机を取り合ったり、ベッドで漫画を読んだりした。


子供のように泣きじゃくる未来に、ばーちゃんとかずオッちゃんはもらい泣きをして、藍はそんな三人を見て何も言わなかった。
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