藍と未来の一つ屋根の下
「未来は私の息子の子供だから私のもんだーって取り上げようとすっからさ、未来は誰のものでもねーんだよっつって、逃げてきてやった」


少ない休みの日に、昼から酒をあおる有里華の話を聞くのが、未来は好きだった。


「未来さー、あんたの人生はあんたの人生なんだから、好きにやって幸せになればいいんだよ。
未来にはその力があるし、あんたは幸せになるために生まれてきたんだからさ」


そんな有里華も、てる子と和夫に食事に誘われるときは、化粧をおさえて言葉遣いも変わる。


さすが接客業なだけあって、その変わりっぷりは未来もたまに驚いてしまう。


「いや、もしさー、もしだよ?藍ちゃんと未来がいい感じになったりしたらさー、母親がこんなんじゃやばいじゃん?印象良くしとかないとさ」


もう全部最初からバレてるんだし今更…と未来は思うのだが、有里華なりの気遣いらしい。


「もし藍ちゃんと未来がいい感じになったら…」そういえば有里華は酔うとよくこの言葉を口にする。


私と藍はそんなんじゃないのにな。そう思いつつ、未来は毎回否定もしない。




「着いたよ」


海岸沿いを走っていた純が車を停めたのは、二階建てのオープンテラスのカフェの駐車場だった。
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