藍と未来の一つ屋根の下
未来は冷めたカフェラテの紙コップをずっと両手に持ち続けていた。

シルバーのワンボックスからは流行りの音楽が流れ、開けた窓からは春の心地よい風が入ってくる。

「一回してみる?」

車を運転する純が言った。

「ミクちゃん、色々まだなんでしょ?」

車は料金所を通過して、都内に入る。

「ミクちゃんみたいなピュアな子はね、一回してみたら世界が変わると思うよ」

「してみるって何を?」

「分かってるでしょ?」

純は未来の家とは違う方向にハンドルを切る。

「俺の家行くよ?」

「今日は帰る」

「ここまで来てそれはないでしょ」

「ママのご飯作らないと」

「デートしといてそれはないでしょ」

純の横顔は優しそうな笑顔を浮かべていた。

「ジュンジュン」

「はあい?」

「今日は帰る」

「明日は?」

「…帰る」

「ミクちゃん」

車に沈黙が流れた。
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