さよなら、Teacher
「若月さーん、ちょっと」

「あ、はーい。じゃ、ヒロくん、ホントありがとう。今度、お礼させて!」

恵は笑顔でヒロにペコリと頭を下げた。そして慌てて呼ばれたスタッフの元に向かっていく。


「珍しいじゃないヒロが人助けするなんて。でも、カッコ良かったわよ」

エリカの言う通りだ。いつもならこんな時は無視だ。面倒な事は嫌いだ。
しかし、今は夢中で飛び込んでいた。


ーなぜだろう。


…そうか、メグミ先生だ。あの人の素早い反応と飛び込む姿の美しさに我を忘れ、奮闘する彼女の為に気づけば助けに行っていた。


助けてやりたかった、恵を。自分の手で。


いつもと違う、ヒロの知らなかった恵の姿に、初めて『先生』以外の感情、『女』を感じた瞬間だった。






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