さよなら、Teacher
ー好きな人、か。

大翔の事は好きだ。でも、結婚とまでは考えられない。一緒になるなら、包容力のある強い人がいい。


『しっかりしろ!助けてやる!こっちへ』


恵の脳裏にふと、浮かぶ。先日プールで起きた事故。ヒロが恵の手助けをしてくれたあの夜。

プールに落ちた男性は暴れて、支える恵の腕からすり抜ける。困り果てた恵の腕をヒロが掴んだ。

思いもかけないほどの力強さ。水しぶきの向こうにヒロの横顔。もう大丈夫だと思った。


ーヒロ、か。そういえば、二股かけているのか、連れている女の子が違ったな。


女にだらしない人は嫌だ。
それに、彼はまだ17才。とても恋愛対象になんてならない。なるはずもない。


恵は自室の窓を開けた。田んぼからの風はすでに秋の気配を忍ばせている。
東京ではありえないほどに澄んだ空気を思い切り吸い込んだ。なんだか、東京でまみれた埃や汚れが体内から流れていくような、そんな気がした。



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