さよなら、Teacher
「遅くなりました」

ようやく秀則が現れたのは、約束の時間を30分以上過ぎてからだった。
どこかヒロに似た美青年。その脇には金髪の
おそろしくスタイルの良い美人。

「お帰りなさい、ヒデ。さ、座って。お連れの方を紹介して」

夫人がパッと笑顔を浮かべる。一気に場の
緊張が解けて、恵もホッとした。

「あぁ、キャサリン・ロバート。モデルだ」
と、秀則が紹介した女性は、一同を見渡す。
そして恵に気づくと急に人懐こい笑顔になって、英語で話しかけてきた。

“アユミじゃない。久しぶり。こんなところで会えるなんて、思わなかった”


アユミ。
その名前にどきりとする。
わずかな動揺を見せつつも恵は、冷静に答えた。

“いえ、人違いです。私はアユミではありません”


「秀則、その娘は、まともに挨拶も出来ないのか」

久典は、訝しげに眉をひそめる。
< 72 / 104 >

この作品をシェア

pagetop