寂しがり屋の月兎
「あの……」

望は、日中言えなかったことを言ってしまうことにする。

「助けてくれて、ありがとう」

「いや」

なぜか兎田は辛そうに目を眇めた。

よく笑う彼なのに、昼から一度も笑ったところを見ていない。

「俺のせいみたいなところもある。謝らせて」

ごめん、と深刻に言う彼に望は慌てる。

「兎田くんが謝ることなんて、なにも」

俯き気味な兎田はいつもより寂しそうに見えた。
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