寂しがり屋の月兎
「……どうすればいいんだーっ!」

玉川望は、頭を抱えて一人で叫んだ。

言ってしまってからはっとして、慌てて辺りを見渡すが、人の影はない。

胸を撫で下ろしつつ、膝の上のノートに視線をやる。

放課後の学校、大木の下のベンチに、望は座っている。

中庭の隅にあるこのベンチは、校舎の窓からも見通せない死角だ。

広葉樹の葉が太陽の光を遮り、かなり居心地よく過ごせるのだが、生徒にはあまり人気がない。

なぜだか知らないが、毛虫がたくさんいるという噂があるからだ。

望はその噂を知らないころにここを見つけ、それから放課後はずっとここで過ごしている。

実際は、毛虫なんて一匹もいないのだ。
< 2 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop