今宵、貴女の指にキスをする。
13
「木佐先生、本当に申し訳ありませんでした!」
「七原さん、頭を上げてくださいよ」

 オロオロする円香に、七原は頭を下げ続けた。

「いいえ。あの日、私が何が何でも京都に行けば……こんなことにはならなかったんです」

 どうやら堂上は京都での一件を包み隠さず七原に話したのだろう。
 地面に頭を擦り付けるような勢いで頭を下げる七原に、円香は心底困ってしまった。

 結果的には、とりあえず問題はない。
 楠もあのときすぐに円香のことを諦めてくれたし、堂上も心配して探してくれた。
 それに、相宮だって駆けつけてくれたのだ。

 相宮が駆けつけてくれたのは、他でもない七原のおかげなのだから。
 だから心配しなくても大丈夫だった、と円香が言うと、七原はようやく頭を上げてくれた。

「うちの堂上に、二度と木佐先生の周りをうろつかないと約束させました。もし、うろつくようなことがありましたら、私になんなりとお申し付けください。上と掛け合いまして、処罰を下してもらいますから」
< 121 / 157 >

この作品をシェア

pagetop