今宵、貴女の指にキスをする。

「相宮さんと木佐先生の仲を壊そうとした堂上に、責任を持って後処理をしてもらうことになりましたから」
「そ、そうですか」
「ええ。さすがに今回のことは大人げない、かつ子供っぽいと感じたのでしょう。堂上本人から申し出がありまして処理に当たっています。ですから、ご心配なく!」

 堂上なりの罪滅ぼしなのだろう。
 ホッと胸を撫で下ろすと、七原は小さくため息をついた。

「実はデザイナー変更が社内で言い渡されたとき、相宮さんから抗議の電話があったんです」

 そのことは相宮からも聞いている。円香は「相宮さんに聞きました」と言うとコクリと頷いた。
 七原は円香の様子を見ながら、そのときのことを思い出して言う。

「木佐先生から連絡はないかと相宮さんから聞かれましたので、ないと正直に答えました。相宮さんはかなり落胆されていましたよ」
「はい……」

 それは先日京都からの帰り道でも聞いたことだ。
 円香は肩をすぼめて頷いた。
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