宝石姫と我が儘な教え子
* * *

「…わたくしとしたことがっ何たるご無礼を…!この責任は、我が腹を切ってお詫び申し上げますっっ」




困った。スフェーンがずっと土下座で顔を床にすり付けてるせいで、さっきから全然話が進まない。


少し前に、私は時守りの宮で瑠璃色の石畳に寝ていたところを発見された。その時にスフェーンは寝台の上に倒れていたので、女官たちが見つけたときにはちょっとした騒ぎになったそうだ。


スフェーンは謀反やらその他諸々の不名誉な疑いをかけられて、かなり肩身の狭い思いをしていたらしい。私が力を使って眠らせたのだと証言しなければ危うく処分されるところだった。


「大袈裟過ぎでしょ。腹を切るだなんて、侍じゃあるまいし。」


「サムライ…?それはいかなるものにございますか?」


日本にあるものを言ったところで通じないんだった。スフェーンが首を傾げているので話題を変えて誤魔化す。



「だいたいスフェーンは悪くないんだから私の力のせいだって言えば良かったのに」


「我が不徳の致すところを、姫様の責任とすることなどできませぬ!」


さっきまでの平謝りはどこへやら、譲れない点はキリッと反駁する。

スフェーンは生真面目過ぎる神官だけれど、その容姿は金髪、碧眼の美丈夫である。長らく日本人をしていた私には緊張を強いられる姿だ。


「ところで姫様、その町娘のような言葉遣いはいかがなものかと。」
< 25 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop