宝石姫と我が儘な教え子

その彼と目が合った。


教師と目を合わせた生徒は大抵恥ずかしそうに目をそらすか、不快感をあらわにして顔を背けるか。そういったリアクションを想像したけど彼は違った。


私を面白がるように、余裕たっぷりに笑ってみせたのである。クラスメイト同様に私が君に見惚れていたとでも思っているのだろうか。

まったく、大人を侮らないで欲しい。素っ気なく視線を外して授業を続ける。


「さて、続いてダイヤモンドの価値についてです。皆さんはいつかきっと、大切な人に婚約指輪を贈ったり貰ったりすることがあると思いますので、知っておいても損は無いかと思いますよ。」


大型モニタに宝石の写真を映すと、女の子達は目をキラキラさせてくれる。私も宝石の写真はいつまでも見飽きないので、彼女たちが同じような反応を見せてくれると嬉しくて頬が緩む。


「ダイヤモンドの価値を決めるのは大きく4つの基準があります。カラットという単位で表される重さの他に、色やカットの美しさ、透明度が価格を決めます。

例えば、この1カラットのダイヤモンド。全ての基準で最高評価を受けているので、市場価格は200万円くらいですね。」


高っ、と生徒が感想をもらす。お金の話をすると男の子も興味津々で聞いてくれるものだ。生徒の目が向いたのを確認して、大好きな石の世界の話を続けた。

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