過ぎ去りし王国
「どんな劇をするの?」

「この国に昔からあるおとぎ話だよ」

クララの問いに、フィオナではなく保健室に入って来た小柄な男子が答える。彼はチャーリー。クララに恋をしているため、クララの前では頰がいつも赤い。

「そう。誰がどんな役をするの?」

クララが訊ねると、チャーリーが「えっと…」と緊張しながら答える。

「主役のお姫様をクララ、君がすることになったよ。フィオナは精霊役で、僕は村人役」

自分の役を言う時、チャーリーは少し悔しそうに言った。

「王子役は俺なんだ」

また保健室の扉が開き、チャーリーとは真逆の背の高い男子が姿を見せる。かなりのイケメンだ。

「オスカー!」

フィオナが驚いたように言う。オスカーはクララとはあまり話したりはしないからだ。

「体調をきちんと整えないとね…」

クララはそう言って、全員に優しく笑いかける。演劇の役者は、全て推薦で選ばれる。みんなから選ばれたことをクララは誇りに思った。みんなの期待に応えなければと強く拳を握る。
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