過ぎ去りし王国
「お父さん、お店の外を掃除してくるね」

つぎはぎだらけのボロボロになった服を着たエリカがほうきを手にして言う。

「ああ。頼む」

ダニエルは、エリカが外へ行ったのを見届けてからため息をついた。

エリカの歳ならば、まだ学校へ行かなければならない。しかし、この家にはお金がなくエリカは学校へ行かずにパン屋で一日中働いている。さらに、年頃の女の子だが、家にお金がないためかわいい洋服を買ってあげることもできない。

エリカの姿を見て、お金持ちの人間がたまに笑っているのを目にするたびに、ダニエルは自分が情けなくなるのだ。

「……国が開国してくれれば!」

ダニエルは拳をカウンターに叩きつけた。

開国をすれば、他国の人間との交流も増え、観光や協力しての経済発展などもある。小麦だって輸入することができるようになり、家にお金が入る。そうすれば、エリカにおしゃれを楽しませてあげることだってできるのだ。
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