拝啓 元カレ上司サマ
美しい人
苦節時代
家族と沙穂に心配を掛けたことを詫びて、心機一転、今度こそ前だけを向いて生きていく、と決めてからの麗香は日に日に明るくなっていく。
そして、かつての麗しい女性に戻っていったのだ。
小さな頃から美しい少女だった麗香。
実の父親も母親も、皆が見惚れるような美男美女で、麗香が幼稚園の頃には既に男子園児が列をなして彼女と遊びたがった。
中学生の時には、連日の男子生徒からの告白に辟易としていたが、女子生徒からは敵認定される程で、友達も少ない大人しい子供であった。
高校は女子高に通う以外考えられなかった。
それでも他校の男子が校門に押し寄せ、ウンザリしながら生活していた。
友達は出来たが、麗香を利用しようとする者が多く、親友と呼べる存在はいなかった。
大学生の頃には、女子大ということもあって、化粧や服装に気を使う学生がほとんどで、悪目立ちすることもなく、まともな学生生活を送れたように思っている。
合コンなどには興味もなく、平和で穏やかな女友達だけとの交流を楽しんだ。