拝啓 元カレ上司サマ

田上という男性は、どうやら田上薬品の御曹司で、ココが営業所になる前に一度だけ顔を出した際に、受付嬢の麗香に一目惚れしたらしいのだ。

しかし、ちょうどその時麗香が他の来客の対応をしていたために、このイケメンのことが全く記憶に残らなかったのだ。

そう言えば、清乃が田上薬品の誰かがカッコ良かったと、顔を赤らめて話していたような記憶はあるが、それがこの人なのかも知れないと麗香は思った。

そんな時、営業部長が少しニヤニヤしながらやって来る。

麗香のオロオロしている姿を見た営業部長が、田上に呆れたように言った。

「田上さん、ダメですよ。まだ秘密にしておいて頂かないと!」

まるで父親に叱られた子供のように、シュンとしてしまった田上に、麗香はウフフっと思わず笑ってしまった。


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