拝啓 元カレ上司サマ
隠された想い
違和感
記憶を取り戻した煌太は、自分自身の本心に向き合うことなく、優希との結婚の日を迎えた。
彼の表情の変化に気付いた者はおらず、皆がめでたいめでたいと、幸せに浸っていたのだが…。
実は、優希だけは違ったのだ。
誰よりも幸せであるべき花嫁なのに。
そんな優希は、煌太が居酒屋で倒れた日から数日、一度も今日まで彼からの連絡がなく、多忙なのだろうと思うようにしていたのだ。
でもきっと、理由が他にあるのだろうと、薄々感づいていた。
何故なら、搬送された病院の病室で「大丈夫だ」と言いながら優希を抱き締めた煌太に、何とも言えない違和感を覚えたのだから。
もしかしたら記憶が戻って、何か大切なことを思い出したのではないか。
そして、優希との結婚に迷いが生じたのではないか。
もしかして…と、様々な不安要素が湧いては消え、消えては湧いて。
しかしながら、優希以外の人間が気付いている様子はない。