拝啓 元カレ上司サマ
「煌太はもう麗香ちゃんとは別れていたんだよ。記憶を失った時にはもうね」
だけどね、と続ける。
「県庁を辞めて、麗香ちゃんを追いかけたくらいだもの。あんたがどれだけ麗香ちゃんを愛していたかは分かるけど…。今、優希さんを突き放して、離婚なんかしたら、会社でどんな扱いを受けるのか、心配なの。何処をどう見たって、記憶喪失になったあんたが原因だからね。優希さんだって、凄く心配していたのよ。本当に良い奥さんじゃない。もう心配かけないって謝りなさいよ。許して欲しいって…」
そう言ってから、嫌味っぽく付け足した。
「だって、病院に運ばれたあの日、記憶がなかったとは言え、麗香ちゃんのことを誰だか分からないし、ただの部下扱いして追い返したじゃない。あの時の麗香ちゃん、可哀想で見ていられなかった」