拝啓 元カレ上司サマ

悟る


梅雨入りしたのも随分前のことで、朝からしとしとと雨の降る、何処かの家の庭に咲く紫陽花眺めてため息ひとつ。

駅までの道程は憂鬱で、磨き上げられたブラウンの革靴が汚れるのがとても嫌だった。

この日の煌太は、役員のお供で朝一番の新幹線に乗っていた。

もちろん役員はグリーン車、自分は普通の指定席。

これ幸いと、一時間半の間はどっぷりと、物思いに耽けろうと目を瞑る。

そしてその時、たまたま取引先の部長が煌太を見つけて、隣の席が空いているのを良いことに、岡谷さん偶然だね~と言って彼の隣を陣取った。









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