拝啓 元カレ上司サマ

煌太は自宅以外では本当に愛想が良いはずだった。

けれども今回だけは、一人瞑想に耽りたかったのだ。

何故なら、この新幹線は麗香の住む街まで連れて行ってくれるのだから、彼女と一緒だった過ぎし日の思い出を、繰り返し繰り返し頭の中で再生していたかったから。

それなのに、少し汗臭いこの部長に仕事の話を振られるものだから、嫌々ではあるけれど、一応課長として応対していた。

「そうそう、岡谷さんのところにみえた周防さん。あ、今は、天下の田上薬品の若奥様でした。ハハハ…」



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