拝啓 元カレ上司サマ
始まりは些細なことだった。
秘書である優希は、時々担当する役員に同行して出張に出ることがある。
煌太のように、他府県へのものはないけれど、運転手付の高級社有車の助手席に同乗して、取引先の挨拶回りだとか、役員の私用で銀行に行ったりする。
役員が取引先での歓談中、優希は気晴らしに緑豊かなその会社の社屋の辺りを散策したことがあった。
その頃の優希は、煌太が元カノの思い出にしがみついて、なかなか打ち解けてくれないことに悩んでいた頃だ。