秘密にしないスキャンダル
「浮かれて俳優業を疎かにしないこと、スキャンダルは避けること、節度ある行動をとることです」

「なるほど……。
なら俺からの条件は“何があっても勇菜を守ること”……出来る?」

「……もちろんです」

緊張で焦りが見えていた隆矢は条件を聞き、目に力を込めて勇人を見据えるとしっかりと頷いた。

「えっと、じゃあ、私からの条件もいいですか?」

「え、お母さんからも?」

まさかのんびりした思考を持っている陽菜が条件を出してくるとは思わなかったとこの場にいた全員が目を丸くしていると、私も母親として娘のことを心配してるのよ?と苦笑した。

「それは当然だと思います。
お付き合いを認めてもらうためならどんな条件ものみます」

「難しい条件ではないんだけど……」

そう言って隆矢の目の前に差し出したのは勇菜が朝から焼いていたクッキーのお皿。
お一つどうぞ。と勧められ若干戸惑いながらも隆矢がクッキーを手に取って口に入れた瞬間、陽菜が口を開いた。

「“どんな勇菜でも愛してあげてください”
……とてもドジでおっちょこちょいで失敗ばかりする子ですけど、よろしくお願いします」

「お母さん、私そこまで言われるほどドジじゃ……」

陽菜に反論しようとした勇菜はクッキーを食べた隆矢が口を押さえ俯いているのを見て口を閉ざした。
隆矢の様子とクッキー、その後に勇菜に視線を移した陽人は、また塩と砂糖間違えたな?と勇人と一緒に呆れた眼差しを向け勇菜は誤魔化すように微笑んだ。
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