part-time lover


「透子ちゃん、先にシャワー浴びる?」

グラスが空になったタイミングで彼が口を開いた。

「あ、大丈夫。よければ雅也くん先に行ってきて」

「わかった。もう少しゆっくり飲んでて」


少し眠そうな足取りでお風呂に向かう彼を視線で見送ったあと、ケータイを手に取った。


画面には新着メッセージの通知。

確認すると送り主はケイさんだった。

さっきまであんなことを考えてたことが伝わってしまったんだろうかという絶妙なタイミング。

思わず息が止まってしまった。

深呼吸をして、恐る恐る中身を確認する。


『こんばんは。夜分にごめんね。
彼氏できた?それならおめでとう。
会えなくなるのはいいんだけど、会えないなら一言連絡が欲しいかも。
自分のわがままだけ言えば、また夏の暑い日に一緒にビールを飲めたら嬉しいな』


メッセージを読んで、一気に頭から血が引いていくのを感じた。
想定外の内容に混乱が止まらない。
こんな連絡をくれるくらい、私は彼にとって大きな存在だったんだろうか。

もう1ヶ月以上会っていなかったけどケイさんの包容力や、抱かれた後のあたたかい気持ちを思い出したら、目頭が熱くなってきてしまった。

「なんでそんなに私にこだわるのかな…」

シャワーの音にかき消されるならいいかと思い、思わず小さく呟いた。

返事が来ないなら察してくれればいいのに。
さよならを言わないでフェードアウトする方がずっと楽なのに。

けど、わざわざこんな連絡をくれたら返信せざるを得ないと思ってしまった。

とりあえずまず今すべきは、雅也くんがお風呂から上がるまでに涙を拭って平静を装うこと。
それができたら今日は十分だろう。


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