part-time lover


慣れた手つきで準備を済まし、無記名のSuicaと小銭入れ、ケータイだけを持参して約束の場所に向かう。
8月半ばの渋谷は、平日関係なく浮かれた若者であふれていたけど夜風のおかげで不快な気分にはならなかった。

待ち合わせ時間よりも少し早めに到着し、少し離れたところから様子を伺った。

ケータイを開くと、タイミングよく新着メッセージの通知。

『着きました。白シャツに黒縁のメガネです』

目を細めて見ると、彼らしき人を見つける。

清潔感はあるし、全然こんなことやる人に思えないんだけど。
背は高いし、10歳近く違うとは思えないくらい体が引き締まっていてなんなら割と好みな見た目かも。

というのが正直な第一印象だった。

今夜は割とあたりだな。そんなことを思いながら彼に近づいた。
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