part-time lover


餃子に小籠包、春巻き、エビチリ、海鮮焼きそば…

目の前にずらっと並んだ料理のラインナップはほぼ雅也くんにお任せした物だけど、なかなか可愛い味覚の持ち主らしい。

それを気持ちよく頬張る彼を見ながら、思わず微笑んでしまった。

当たり前だけど、同年代の男の子ってよく食べるなぁ。

そして私自身もリラックスしてるせいか自然と1人の時よりも箸が進んでしまう。

「今、透子ちゃんが考えてること、なんとなく分かる気がする」

「え?」

口についたチリソースを指で拭いながらいきなり雅也くんがそんなことを言い出したから驚いてしまった。

「子供みたいって思ってたでしょ。母親みたいな目で見てた」

私も私で大概顔に出やすいらしい。

「すごい、当たり。
注文のラインナップもそうだけど、食べ方とかも幼くて可愛いなって思ってたよ」

「そう言われると食べづらいんだけど」

「いやいや、そのまま続けて」

くすくす笑って、気持ちを落ち着けるためにビールを一口飲み込んだ。

「ご飯食べるの一つとっても、相性ってあると思わない?
もともとわりとよく食べる方なんだけど、一緒にいる人が心地よくないとすぐお腹一杯になっちゃうみたいな」

グラスが空いたことを確認してビールを追加で注文した後、視線を私にうつしてそんなことを言い出すからドキッとしてしまった。
幼いと思ってたのにいきなり核心をつくようなことを言うギャップが、この人の魅力だと思う。

「わかる。職場の接待飲み会とかまさにそれだよね」

「そうそう!透子ちゃんといると安心してパクパク食べられちゃう」

そう言い終わると幸せそうな顔で餃子を噛みしめて…コロコロ変わる彼の表情を見てるだけで心が跳ねている自分に気づいた。

「私も一緒にご飯食べてお酒飲んでるだけなのに十分すぎるくらい楽しいよ。
このあと一緒に初めて音楽聴けるのも楽しみ。予約してくれてありがとう」

「喜んでくれてよかった。クラブジャズとか好きだった?」

「詳しくはないけど、聴いたりするよ!
お店自体も行ってみたいところだったから嬉しい」

「俺も行きたいと思ってたんだよね。今日のバンドのライブは何回か行ったことあるんだけど、めちゃくちゃかっこいいから期待してて」

彼のお勧め具合から今夜のライブへの期待がさらに高まった。

「楽しみだなー。音楽の趣味広いんだね。ハウス専門かと思ってたけど」

「わりとジャンルとか関わらずいいと思うと聴く方かな。広く浅くだけど」

「いいことだね。お勧めあったらまた教えて」

「もちろん」


お互いに好きな曲を聴きながら話ができたら、それだけでお酒が進んでしまいそうだ。

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