稲荷と神の縁結び
私は夕湖ちゃんのお願い通り、家に戻り台所へと向かう。
そして鍋に火を着けたところで、妹のいちか こと ちか が起きてきた。

「おはよ、こはちゃん。それもらっていい?」

「いいよ、ちょっとまって」

「ありがと。あと三十分で出るわ」

「早いね」

「今日は四本だて……さすが大安吉日………」


ちかはまだ大学生で、休日には結婚式の手伝いに駆り出される。
うちと協定を結んでいる神社‐そこそこ大きな規模の所で、神様に浦安の舞を奉奏する重要な役目。

いちかだけでなく、私も学生時代は駆り出されていた。まぁお礼がそこそこ良い金額なので、良いアルバイトの感覚。

しかしこの仕事ができるのは…若いうちだけだ。十代から二十代前半の、若いうちだけの仕事。
大体巫女の定年は、三十歳だと言われている。もう私も定年近い年齢。
私が呼ばれることも無くなったし、家の手伝いで巫女の装束を着るときも……少し抵抗が出てきた。

昔は私も、このように大安吉日の休日は慌ただしかった。それももうお役目後免。
徐々に私には、世代交代の波が押し寄せてきているのである。
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