稲荷と神の縁結び
私も食べ終わり、台所に食器を下げに行くと‐まだ夕湖ちゃんは甥っ子の枕となり、動けないでいた。

(そうだ!)
私は甥っ子を夕湖ちゃんから引き剥がして、即座に居間に走る。そして圭ちゃんの膝に「よろしくお父さん!」と言って投げた。

すると次の瞬間‐甥っ子は起きてしまいギャンギャンと喚き始めるが……圭ちゃんの顔を見た瞬間、胸にしがみつくとコテッと眠りに落ちた。
圭ちゃんも愛おしそうに頭を撫でながら、寄り添うように体を倒して寝転ぶ。
圭ちゃんにはしばらく添い寝しててもらおう。


圭ちゃんは口にはあまり出さないけれど……子供のことをすごく愛している。良いお父さんなのだ。
そんな子供の学資保険を解約とは……相当な苦渋の決断だろう。


台所に戻ると、夕湖ちゃんがダイニングの小さいテーブルで朝食を食べていた。
「圭ちゃんにパスしてきた」と言って、私は夕湖ちゃんの前に座る。


「ごめんねこはるちゃん……何から何まで………」
はぁ、とため息をつく夕湖ちゃんの表情は暗い。

「次の来客はいつぐらい?」

「昼に商工会の人達来るみたい。うちの両親も。
とりあえず『孫の金は心配するな!』って言われてるけど……あんまうちも余裕あるわけじゃないしねぇ……」
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