稲荷と神の縁結び
淡々と暗い表情のまま、夕湖ちゃんは玉子焼きを摘まんでいる。当然いつもより口数は少ない。


「解体したとして、鳥居の再建はどうなるの?」

「親方さんの話では、着工までに数ヶ月かかるって。前々回の記録は古すぎて残ってないから、図面起こすのからやり直しになるんだって」

「そっか………」

私も気分が沈んで行くが……夕湖ちゃんは「こう考えようか」とさっきよりも明るい声を出す。

「圭吾は自分が生きてるうちに、鳥居の再建に当たるとこは無いと思ってたから………チャンスが巡ってきたぐらいの気持ちを持たないとね」


そう言って、ほんの少しだけ微笑む夕湖ちゃん。

まぁ確かにそうだよなぁ…。
圭ちゃんは『お祖父様がなし得なかったこと』をするという思いで、ここまできたのだ。
唯一どうあがいてもできないことは…この百年に一度の鳥居の建て替えだろう。それで前回のお祖父様を上回るものができたなら、圭ちゃんの目的も達成するであろう。


そう思うと、ほんの少しだけど……本当にほんの少しだけど、救われた気分になる。

私も圭ちゃんも…この家族は随分と夕湖ちゃんに救われているなぁと、改めて思うのだった。
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