稲荷と神の縁結び
「………何ですか?これは」

「んー…何か……気付いたら?」

多少は悪いと思っているらしく、ほんの少しは焦った顔を見せている清貴さん。
私はそんな清貴さんを無視して、ひたすら片付けに明け暮れた。


「こはる、ベッド一緒にしていい?」

「ええ、どうぞ」

床を雑巾がけしている最中そう聞かれ、そう答えたが……数秒後我に返る。

一緒?って………何が?


ま、いいか。



そして私は深く考えずに雑巾がけに戻ったのだが……終えた頃には、清貴さんの部屋にベッドが二つ並べられていた。私が使っていたベッドが移動されていたのだ。

あぁ……一緒ってこういう意味か!とようやく私は理解したのだった。


「き、清貴さん………あの、ここに置かれていた机とかは……?」

「あぁ、客間を一個潰して書斎にしようと思ってるんだけど」

「そそ、そうなんですか……」

「他にも部屋割りとか、今後のこと話し合いたいんだけど」

「そそそ、そうですよね…」


そして部屋を後にしようとした‐その時だった。

「こはる」

不意に私は、抱き寄せられる。
腕にすっぽりと収まり、清貴さんの体温が体全体に伝わってくる。
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