稲荷と神の縁結び
午後七時。

私は滋子様に指定された住所に来ていた。
その場所は、昔の洋館を改装した洋食屋さん。
入り口にかけられてあるメニューをみると‐思わず目を疑った。

(オムライスだけで……さ、さんぜんえん?!)

更にサラダやドリンクを付けるとなると…五千円は優位に越える。もはや忘年会以上だ。夕食にこんな金額をかけるのは。

意を決して入店し、「永江滋子様の連れ」だと伝えると、店の奥に案内される。
個室のドアをノックし入ると‐既に滋子様は待っていた。

「申し訳ございません。少々遅くなりました」

「お仕事だもの仕方はないわ。ごめんなさいね。急だったもので、ここしか空いておりませんでしたの」
ここしか……って私には充分すぎて目眩がしそうです。そう心の中で呟く。


****
「あなた、清貴がお世話になっているようね」

注文したオムライスを食べていると‐滋子様はそう切り出した。

「お世話なんて……とんでもない。私がすごく、清貴さんに助けられているだけです」

そう答えると、ワイングラスを傾ける滋子様は‐苦虫を噛み潰したような顔をしている。
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