偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~

 これって、わたし?

 この手をどう扱っていいのかわからずに、答えを求めるようにして彼を見た。

 川久保さんはにっこりと笑いながら、小さくうなずく。そしてもう一度わたしに手を差し出した。

 わたしが彼の手に自分の手を乗せると、彼は軽くにぎって立ち上がらせてくれた。

「あ、ありがとうございます」

「どういたしまして」

 立ち上がってすぐに、彼の手を離す。いまだかつて男性にこんな丁寧な扱いをされたことがないのだから、少しくらい挙動不審でも許してほしい。

 なんかこれって、恥ずかしいかも。

 というのも看護師長の視線を、痛いほど感じていたからだ。ちらっと彼女の方に視線を向けると、気まずそうに見て見ぬふりをした。

 そんな彼女の態度を見ているはずなのに、川久保さんはまったく気に留める様子もない。

「師長さん、助かりました」

「いえ、お役に立ててよかったです。小沢さんも、たまには顔を見せてね」

 彼女は優しく笑うと、わたしと川久保さんを応接室の外まで見送ってくれた。

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